機長日記

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ラブシーンと終演、湿度の対比『彼女が髪を切った理由 [後編]』雑破業

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 前編から引き続く湿度の高いラブシーンと爽快な結末の対比が印象的な本。

 父の海外赴任を切っ掛けにして夏川家に暮らす三姉妹と同居することになった高梨修作。女の子とロクに話せないようなオクテの修作は、長女・小百合と三女・菜々のあまーい誘惑に負けてイケナイ関係になってしまう。

 『ゆんゆん☆パラダイス』で描かれた爛漫な性格で人の心にスッと入り込むロリ娘や恥ずかしがり屋でいじらしいショタのイメージが強い雑破業。本作で描かれる3姉妹の長女でおっとりとした小百合の姉キャラっぷりが良い。女性慣れしていない少年がオトナの余裕に弄ばれドキマギする。雑破業による読者の心に寄り添うような心理描写が修作と読者のドキマギをピタリと縫合させる。おませなロリータの末妹・奈々による爛漫ぶりも健在で菜々のキュートなおねだりが修作と物語をググっとリードする。

 ナポレオン文庫時代の雑破業作品は、一人のヒロインとのラブシーンを丹念に描く作品を中心に描いた。本作以降では、1つの物語を紡ぐ小説媒体でありながらPCノベルゲームを彷彿とさせるような主人公と様々なヒロインたちとのラブシーンがたっぷりと描かれる作品が雑破業作品の顔ぶれに加わっていく。

 本作と次作『シンデレラ狂想曲』では両作ともにメインヒロインとのラブシーンが描かれない。どちらの作品もラブシーンに負けることのない、登場人物たちの心にそっと触れるような愛情のあるエピソードが紡ぐエピローグによる、爽快な読後感は特筆すべき特徴のひとつだ。

彼女が髪を切った理由 [後編]
カバーイラスト:佐野タカシ
カバーデザイン:宗像知行
本文デザイン:高野あかね、石川順子
1996年3月25日:初版発行(電子書籍販売サイト電子書店パピレスの記載に準ずる)
著者:雑破 業
発行人:高橋栄造
発行所:辰巳出版株式会社
写植・版下:平山写真植字社
印刷所:大日本印刷株式会社
ISBN:4-88641-126-6 C0293

ぼくたちの雑破業クロニクル 疾風!嵐のフランス書院・ナポレオン文庫編

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クリムゾン作品「くっ・・・殺せ!」の覚書き

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クリムゾンが創作を行う上での「こだわり」について書かれたツイートが話題だ。

クリムゾンは、主に成人向け漫画を執筆している漫画家で同名のサークルを主催している。気の強い女性が屈服するストーリーや独特なセリフ回しと擬音が特徴的なサークルだ。FF7のヒロイン・ティファが元ネタの同人誌『あなたが望むなら私何をされてもいいわ』やネット上で見かける「くやしい…!でも…感じちゃう!」や「ビクッビクッ」というセリフや擬音で知っている人も多いのではないだろうか。

果実総集編

今回のツイートに関して、クリムゾンファンの誰しもが思う疑問がある。「あれ、『紋章の傷痕』は?」と。

『紋章の傷痕』は、2000年に頒布された任天堂によるSRPGファイアーエムブレム』の2次創作。功績をあげてマルスに認められようと単独でノルダの奴隷市に向かったシーダ。しかし、深い森に入ったシーダは、気がつくとならず者たちに囲まれていた……。

本作では、ならず者に囲まれたシーダが自らのことを「殺しなさい!」と言っているのだ。

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また、柔らかな地面では無く、その辺の地面に押し倒されている。(小石が痛そう!)

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なぜ、本作に限って例外的に禁じ手を多用されているのか?その答えは、本作がクリムゾンのホームページ内で行われたショートストーリー募集企画「クリムゾン補完計画」に投稿された『絶望の天馬騎士』(作/N.O)をマンガ化した作品であるためだと思われる。つまり、本件はクリムゾン自らが創作した物語ではないため、セーフであることをここで明記したい。また、「クリムゾンのヒロインは確かに気高いですが、生に執着があるので自ら殺せとは言わないのです。」の文章の「クリムゾンのヒロイン」がクリムゾンのオリジナルキャラクターを指している場合は、なおのことセーフだ。

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http://web.archive.org/web/20040622052823/http://www.alles.or.jp/~uir/comic3.htm

ちなみに元になった小説『絶望の天馬騎士』(作/N.O)では、「クッ…こ…殺しなさいッ!ドルーアの捕虜になるくらいなら死んだほうがマシよッ!」という台詞があり、モロに「くっ・・・殺せ!」だったのでこれもまたセーフ!なのであった。

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サービス満点なラブシーンの下に広がる初恋のほろ苦い記憶『彼女が髪を切った理由 [前編]』雑破業

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 フランス書院ナポレオン文庫から刊行された雑破業の単行本『おませでゴメン! ゲームキッズの夏物語』から約1年振りに刊行された『彼女が髪を切った理由 [前編]』は、属性の異なるヒロインたちとのラヴシーンをたっぷりと詰め込んだと作品となった。

 幼いころに喧嘩別れしてしまった高梨修作と夏川果林。高校2年生となった修作は、父の海外赴任を切っ掛けにして果林の家に居候することになった。修作を待っていたのは夏川家に暮らす三姉妹。心を閉ざした果林のつめたーい視線と長女・小百合、三女・菜々のあまーい誘惑の連続に修作は悩まされる。

 辰巳出版から刊行されたネオ・ノベルズシリーズの1作目。以降、ネオ・ノベルズからはフランス書院ナポレオン文庫から再刊行された6作品を含めた11作の雑破業作品が刊行される。

 すれ違ったまま離れ離れになってしまったふたりの再会から始まる物語は、『Myself ; Yourself』や『星空へ架かる橋』など雑破業がシリーズ構成を務めるアニメ作品などでも描かれる題材のひとつ。プロローグ「わたしが髪をきった理由」で描かれる修作、果林の淡く切ない思い出と共に果林の苛立ちや悲しみが作品の根底にサッと広がる。

カバーイラスト:佐野タカシ
カバーデザイン:宗像知行
本文デザイン:高野あかね、石川順子
1996年3月25日:初版発行
著者:雑破 業
発行人:高橋栄造
発行所:辰巳出版株式会社
写植・版下:平山写真植字社
印刷所:大日本印刷株式会社
ISBN:4-88641-125-8 C0293
233ページ

ぼくたちの雑破業クロニクル 疾風!嵐のフランス書院・ナポレオン文庫編

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