機長日記

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緊張と弛緩に沈み行く心と体。『Child Play ~委員長の秘められた欲望~』雑破業

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 張り詰めた心と強張る体から逃れた時の安らぎに勝るものはない。氷川静貴は私立秀英高校のクラス委員長。家でも学校でも、ワガママや駄々もこねない所謂「いい子」である静貴の緊張と弛緩の快楽を描いた作品が『Child Play ~委員長の秘められた欲望~』だ。

 年齢とともに比例して優等生を演じる負担は大きくなっていった静貴が「いい子」の仮面から逃れるように隠れて買ったバイブレーター。静貴は、夜な夜な息を潜めながら自らを慰めていた。そんなある日、文化祭の女装喫茶で使う衣装の用意を押し付けられてしまった静貴。貸衣装屋で見つけた幼稚園児の衣装と幼いころの何も知らない無邪気で幸せだった日々を重ね合わせ始め……。

 作中で静貴がようやく手に入れた日頃の苦しみから解放。そんな密やかで幸せな一時も永遠のものではない。物語の中盤で登場するクラスメイトの加藤が静貴の倒錯と物語を更に加速させる。短い時間の中で繰り返される緊張と弛緩。湿度の高い濃厚なラブシーンの快楽に静貴は深く深く沈んでいく。

 誰しもが集団の中で生きていくには、自分の思いをグッと殺さなければいけない瞬間が多かれ少なかれ存在する。そんな誰にも明かすことのない思いの吐露を丹念に描く。雑破業による読み手の心根に染み入るような心理描写が本作を忘れ難き作品にしている。

Child Play ~委員長の秘められた欲望~
本文イラストレーション:水無月十三
本文デザイン:白井典子、草
1997年6月25日:初版発行
著者:雑破 業
イラスト:水無月 十三
発行人:高橋栄造
編集担当:梶山 聡
発行所:辰巳出版株式会社
写植・版下:有限会社光洋写植
印刷所:光栄印刷株式会社
ISBN:4-88641-220-3 C0293

ぼくたちの雑破業クロニクル 疾風!嵐のフランス書院・ナポレオン文庫編

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