機長日記

買ったものとか、情報系評論/オーディオドラマ制作サークル超電磁弾痕のこととか

Wヒロインを美しく描く『アナと雪の女王』

 3DCGによる綺羅びやかなビジュアルと軽快なミュージカルシーン、ストレートな物語がしっかりと組み合わさった、力強い作品が出来上がった。『アナと雪の女王』は、アンデルセン童話『雪の女王』をモチーフにして作られたディズニーによる長編3DCGアニメーション。

  主人公のエルサとアナは、アレンデール王家に生まれた姉妹だ。氷や雪を作り出す魔法を生まれ持ったエルサは、魔法の力が制御出来るようになるまで、城の中に1人で閉じこもって暮らしていた。数年ぶりに城を開放することとなったエルサの戴冠式典の日。妹のアナとの口論を切っ掛けに魔法の力を暴走させてしまったエルサは雪山へと逃げこんでしまう。物語は、エルサを追って雪山へ向かったアナが道中で出会う人々との交流が縦軸。自身の力を恐れ、自分のありようについて悩むエルサのドラマと真実の愛とは何かを捜し求めるアナのドラマがミュージカルシーンで美しくに描かれる。

 第一の見どころは雪や氷の描写だ。冒頭で描かれる氷の切り出しを行う人々のシーンや雪山の道中で描かれるツララ。美しい雪の世界が3DCGならではの透明感で描かれる。

 第二の見どころは個性豊かなキャラクターたちだ。戴冠式の日にアナが出会ったサザンアイルズ王国の末っ子王子ハンスや氷売りのクリストフと相棒のトナカイ・スヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフ。時に楽しく時に物語の核心にアナとエルサを誘う。

 物語の転換点に一つ、雪山に逃げてしまったエルサが本作の主題歌である『Let it go』を歌いながら自らの魔法で氷の城を作るミュージカルシーンがある。人の目に怯えながら過ごしてきたエルサが様々なしがらみから開放され伸びやかに歌うシーンが美しく描かれる。国を捨て雪山に逃げてしまったエルサの行動は過ちかもしれない。しかし、その時の経験があるから今の自分がいる。二人が過ごしたそれぞれの人生を否定することなく、美しく肯定的に描き切った力強さが作品の屋台骨をしっかりと支えているからこそ『アナと雪の女王』は優しさに満ち溢れているのだ。